織田浩一の近未来マーケティングガイド 第4回 CGMネーション〜爆発的に増加するCGMユーザとCGM時代到来の予感〜

織田浩一 [著] 2006年08月17日
http://markezine.jp/a/article.aspx?aid=102&atid=&at=&style=print

 日本でもブログユーザが急激に増加し、CGMの普及は進んでいる。だが、アメリカではすでに35%のネットユーザがオンライン向けに何らかのコンテンツをつくる、というデータが出ている。今回は「CGMネーション」と題して、その調査の内容を見てみたい。

ネットユーザの35%がコンテンツをネットにあげるアメリ

 日本でも総務省が発表したようにブログユーザが6ヶ月で84%以上増えたとか、インターネットコム株式会社とGirls Labが携帯電話を持っている10-15歳約1400人を対象にした調査で3割がブログを作ったことがあるといるなど、CGMの普及は進んでいる。だが、アメリカではすでに35%のネットユーザがオンライン向けに何らかのコンテンツをつくる、つまりCGMをつくるというデータが出ている。

 アメリカのNPO調査団体Pew Research Centerは、どの政党にも寄らない調査団体として高く信頼されているが、彼らが行っている長期調査プロジェクトのひとつに、インターネットが家族やコミュニティ、仕事、毎日の生活、教育、医療、市民・政治活動にどのような影響を与えるかを定期的に調査するPew Internet & American Life Projectというのがある。その中の調査のひとつ「Home Broadband Adoption 2006」にこのネットユーザの35%がコンテンツをネットに上げるデータがでてくる。

イノベーター層からアーリーアダプター層へ

 この調査は2005年暮れから2006年春に4000人のアメリカ成人を対象に行われたものだが、それによると、アメリカ成人の73%がネットユーザで、これは人口にして1億4600万人にあたり、家庭ブロードバンドユーザーは、42%(同8400万人)であるという。イーシーリサーチ株式会社によると、日本のブロードバンド利用者は総人口の39.7%、4979万人ということであるので、比率的には同じような浸透率のように感じられる。

 そして、その中でアメリカのネットユーザの35%、人口にして4800万人がブログ、自分または仕事のWebページ、ストーリー、アート・画像、ビデオなどオンライン用にコンテンツをつくっているということが示されている。面白いのが、家庭でブロードバンドを使っている人たちでは42%がCGMをつくっており、そして彼らがCGMリエーターの73%を占める、ともちろん高いのだが、その反対側の27%がダイアルアップでもCGMを作っていることだ。  さらに、ブログやWebサイトを除いた、自分のストーリー、写真、ビデオを、ネットユーザの26%、3600万人がネットにあげている。Flickrなど写真共有サイト、YouTubeなどビデオ共有サイトが急成長しつつある背景には、ユーザ層がイノベーター層からアーリーアダプター層へ移っていることにあることが感じられる。

増加が予想されるアメリカのCGMリエータ

 年齢別のCGMリエーターのデータはさらに興味深い。インターネットユーザの中でブログ、Webサイト、ストーリー、ビデオなどを作ったことのある人の率は、65歳以上で18%、50−64歳で29%、30−49歳で36%、18−29歳では43%となっている。調査時期が違うので、そのまま比べることは難しいが、同じくPew Internet & American Life Projectの昨年11月に公開された、1100人の12−17歳を対象の「Teen Content Creators and Consumers」の調査によると、57%がCGMリエーターであることが発表されている。

Pew Internet & American Life Project

 ある程度想像できることではあるが、年齢が下がるにしたがってCGMを高い割合で作っているが、30代以上でもかなりの人たちがCGMを作る活動を生活に取り入れていることがわかる。つまり、今現在のCGMの爆発的普及はまだ過渡的な現象で、それぞれの層の人たちの年齢が上がるにしたがって、 CGMはさらに増えていくことが予想される。そして、自分が作ったものが「あちら側」に置かれることに抵抗がない世代がますます増えるということだろう。
日本も近い将来、CGMネーションになる

 オタク的な雰囲気が漂っていたCGMであるが、アメリカではすでに一般的な人たちにも普及し始めている当たり前のものになりつつある様子が覗えたのではないかと思う。日本での同様のデータが見あたらなかったので、文化的な比較等はできていないが、同様のブロードバンド普及率でそれも回線のスピードが高い日本で、現在のブログ・SNSブームの先に、写真共有、ビデオ共有ブームが来ることは容易に予想できる。日本が「CGMネーション」になる日もそんなには遠くないのではないだろうか。