実戦!Google Analytics徹底活用講座 第3回 Google Analyticsでサイトの費用対効果を測定する

伊草淳 [著]  2006年08月30日
http://markezine.jp/a/article.aspx?aid=110&atid=&at=&style=print

 Web サイトのいいところは「いくら使うと、どれくらい儲かるのか」という計算がしやすい点だと思います。Google Analyticsを使えば、そういった費用対効果の計算もカンタンです。今回はGoogle Analyticsの「目標」という機能を使って、Webサイトの効果測定の方法を解説していきます。ぜひ、あなたもやってみてください!そして記事の最後には大変嬉しいお知らせがありますのでご覧ください!

Webサイトの目的はなんですか?

 自分の話で大変恐縮ですが、私は「御苑塾」という自社サイトを運営する一方で、クライアントさんのWeb制作業務もしています。新しいお客さんから依頼があるとまず打ち合わせをするのですが、いつも、初回の打ち合わせで聞いている質問があります。

 それは「御社がこれから作ろうとしているサイトの目的を、たった1つに絞るとしたら、それは何ですか?」です。

 多くの場合、

「会社の存在を広く知ってもらいたい」
「新しいサービスの宣伝をしたい」

といった返答が返ってきます。それを足がかりにディスカッションを続けていくと、最終的にはもっと具体的な目的にたどりつきます。たとえば、

「資料請求の件数を増やしたい(営業マンの負担を減らしたい)」
「○○という商品をもっと売りたい(在庫を処分したい)」
「メルマガの購読者をもっと増やしたい(見込み客を増やしたい)」
「社員の離職率が高いので求人の応募を増やしたい(採用コストを減らしたい)」

などです。

 そしてその目的を中心に据え、他の情報を切り捨てる形で、実際にWebサイトを構築していきます。

重要!!情報を詰め込みすぎると訪問者は混乱するのです!

 なぜ目的を絞るかというと、連載の第2回でも触れましたが、運営者側が期待しているほど、自社のWebサイトは見られていないことが多いからです。(参考データ:連載第2回「『閲覧時間』で悲しい現実を知る」)

 誰もが知っているような有名な企業やサービスのサイトなら、そんなことに頭を抱えなくても済むでしょう。でも、日本全国から見れば、そのような恵まれた会社やサービスを売ったり宣伝したりする立場にあるWeb担当者はほんの一握り。もちろん、私だって毎日苦労しています。

 つまり私たちは、多少大げさな言い方をすれば「興味を持って自社サイトを見てくれている人はそもそも少ない。にも関わらず、『問い合わせをする』『購入をする』といった具体的な行動を自社サイトでおこしてもらわないといけない」という、キツーい仕事をしているのです(笑)。

 そのためには、余計な情報を排除し、Webサイトでとってもらいたい行動を訪問者がとりやすくなるようにしなければなりません。なので、1つのWebサイトに持たせる役割(目的)はなるべく少ない方がいいのです。理想は1サイトにつき1つの目的です。人間だって、1人の人にできることは限られてますよね。それと同じです。

 実際、私が勤務している(株)デジカルでは、2005年12月にWeb制作のサービス案内だけ独立させて別サイトにしたところ、それまで本当にまったくの0件だったWebサイト経由の問い合わせ・見積もり依頼の件数が、少なくとも2週間に1件は入るようになりました。2006年3月は、初めて月間で10件を超えました。その時、「きっと、今までは1つのサイトに情報を詰め込みすぎていたんだろうなあ」と気付いたのです。

 もしあなたがWebサイトをお持ちでしたら、ぜひ目的を1つだけ決めてみてください。では、次のページから具体的に、Google Analyticsを使った目標の設定および、効果測定の方法を解説していきます。

効果測定はサイトの打率チェック

 実際にGoogle Analyticsに「目標」を登録する前に、Webサイトにおける目標達成の定義について説明しておきます。具体的には、

「購入ありがとうございました」
「資料請求ありがとうございました」
「メルマガの購読申し込みありがとうございました」

といった、訪問者が行動を起こしてくれた後に表示される御礼ページへのアクセス数=目標達成の数値、ということになります。つまり、全体のアクセス数(打席に立った数)のうち、どれだけの人がこちらの思惑通りの行動をとってくれたか(ヒットの数)ということで、野球でいうところの打率とまったく同じです。できればイチロー並のサイトにしたいところですね(笑)。

 私が運営している「御苑塾」を例にとりましょう。このサイトの目標は「セミナーに申し込んでもらうこと」と「メルマガに登録してもらうこと」の2つです。でもセミナーはいつもやっているわけではないため、恒常的な目的は、後者のメルマガ登録です。そこで、御苑塾のどのページを開いても、左上にメルマガ申し込みフォームが表示されるようにしています。

 そして、メルマガ申し込み完了までの過程は簡略化しています。目標到達ページを含め、訪問者が表示させる必要があるページは2つだけです。

1. 「御苑塾」のどこかのページで訪問者がメルマガ申し込みボタンを押す
2. ありがとうございましたページが表示される(目標到達)

 これだけです。

 もちろんそれには理由があります。どのWebページでも、他サイトへ行ってしまう「脱落者」が発生するからです。脱落率が0%のページというのは極めてまれです。たとえば、ECサイトを運営している方なら「買い物カゴに商品を入れたんだけど、何日も決済してくれない人がいて困った」という経験があると思います。それは、買い物終了までのどこかのステップで脱落してしまったからです。

 つまり、目標到達までのステップが多ければ多いほど、その分取りこぼしが発生する危険性も増えます。なるべくシンプルにするといいでしょう。

登録した目標の達成率をチェックする

 では実際に「御苑塾」をサンプルにして、目標(メルマガ登録)をGoogle Analyticsに設定してみましょう。

1:解析するサイトを選ぶ

Google Analyticsにログインし、管理ページを表示します。解析したいプロファイル(Webサイト)の「編集」をクリックします。

2:「編集」をクリック

続いて表示される画面で「編集」をクリックします。なお、1つのプロファイルにつき、目標は4つまで登録できます。

3:目標ページのURLを入力

目標URLの入力欄に「メルマガの登録ありがとうございました」など目標ページのURLを登録します。その後、わかりやすい目標名をつけてください。続いて「有効な目標」をオンにします。

4:プロセスを登録して、保存

目標ページまでのプロセスを登録します。終わったら、ページをスクロールさせて、一番下にある「保存」ボタンを押して終了です。

5:おまけ・複数のステップがある場合の例

目標到達までに複数のステップが存在する場合は、下図のように入力してください。ステップは10まで登録できます(でも実際は、目標到達までに10もステップを踏ませてはダメですよ! 少なくシンプルに!)

 これで、Google Analyticsが目標到達に関する各種の情報を取得・分析してくれるようになります。

登録した目標の達成率をチェックする

 では、実際に解析ページを見てみましょう。目標の達成率を調べるには、Google Analyticsの解析画面で、

「すべてのレポート」
    ↓
「コンテンツの最適化」
    ↓
「目標と到達プロセス」

をクリックします。そうすると、6つほど目標に関する解析項目が出てきます。見てもらいたいのは1つだけ。「目標到達プロセスのナビゲーション」です。あとの5つはお好みで構いません。

 下が目標ページ、上が前段階となるページの解析結果です。「御苑塾」では目標までのステップを1つしか登録していないため2つしか出ませんが、3つのステップがある場合は3つの前段階ページ+目標ページ=4ページの解析結果が表示されて、もっと画面が下に長くなります。

 また、左の列は入口ページ、右の列は出ていった先のページに関するデータです。つまり、真ん中の列から右の列に伸びている矢印が、脱落数および脱落率となります。

 では2006年1月から3月までの3ヶ月の「目標到達プロセスのナビゲーション」を見ながら「御苑塾」のメルマガ申し込みの成功率の変遷をチェックしてみます。

(1)2006年1月の成績

成功率は9.52%。10人中1人がメルマガ登録してくれているということで、驚異的な数字です。オープンは2006年1月23日だったので、オープン当初の珍しさがあったのでしょう。なお、この月はプレスリリースサービスやメルマガ広告を使うなど、10万円くらいの宣伝費を使いました。言い換えれば、10万円使って60人集めた、ということになります。

(2)2006年2月の成績

成功率は8.58%。依然として高い成功率が続いています。おそらくまだ「オープン当初の珍しさ効果」が高い時期だと思います。この月は知人のサイトで紹介してもらうなど、無料でできるプロモーションを頑張りました。言い換えれば1ヶ月間、東奔西走して103人集めた、ということになります。

(3)2006年3月の成績

成功率は2.75%。あらー、だいぶ落ちてしまいました。ちなみにこの月は1、2月に比べれば特に何もしていません。つまり、この数字がWebサイト単体が持つ本来の力ということでしょう(ちなみに4月以降も、似たような数字が続いていました)。大ざっぱに言うと「御苑塾」の場合、アクセスを100集めれば2、3人が必ずメルマガ登録してくれるサイトということが、ここでわかったわけです。

効果の高い宣伝方法をGoolgle Analyticsであぶり出そう

 いかがでしたでしょうか。このように目標を設定することで、Webサイトの持つ能力が数字としてあらわれるようになるため「目標達成のために何をすべきか」ということを明確に決められるようになります。

 たとえば私があるWebサイトを運営していて、100アクセスがあったら見積もり依頼が10件きて、そのうち1件は必ず成約に結びつくというデータを持っているとします。そして、仮に1件あたりの売上げが平均して50万円だとします。

 つまり、100アクセスがあれば、50万円の売上げが見込めるサイトです。

 その宣伝のために、私はAという媒体に10万円の広告を出すとします。その広告を出したことで、2000アクセスが集まったとしましょう。そうしたら20 件の見積もり依頼がきて、2件成約できます。10万円投資して100万円のリターン。素晴らしい。なので、私はその後も予算を積極的に確保し、Aにはどんどん広告を出すことでしょう。

 もし、あなたがWebサイトを運営していて、上記の計算をするためには、

1. 見積もり受付ページ(目標達成前のページ)のアクセス数
2. そのうち何人が実際に見積もり依頼をしてくれるか
3. 見積もり依頼してくれた人のうち、何人が実際に発注してくれるか

のデータがなければいけません。これらデータはGoogle Analyticsを使って毎日計測できます。そうすることで「運営者が何もしなくてもWebサイトが達成できる成功率」がわかってきます。

 すると、たとえば「Aに広告を出す」といった、何らかの費用が発生する宣伝・マーケティング活動をしたときに「1」と「2」、「3」の数字がどれだけ上がるかもわかるようになります。つまり「○○円の予算を使ったら、いつもに比べて○○件見積もりの依頼が増え、○○○○円売上げが上がりました」という費用対効果の計算があっさりできます。

 もちろん、宣伝・マーケティング活動の中には成功もあれば、失敗もあるでしょう。でも大事なことは、それらの活動を通じて「効果のある宣伝・マーケティング活動」「逆に、お金を使ってもあまり意味のなかったこと」を具体的な数字の裏付けと共にリストアップしていくということです。これを続けていけば、自社および自社サービスにとって効果の高い宣伝・マーケティング活動が何かをあぶり出していくことができ、徐々に成功の精度を高めていくことができるのです。

 弊社をはじめとする多くの中小企業は、残念ながら、いつでも宣伝費を確保できるわけではありません。ところが(現場の最前線でWeb担当者をされている方であればおわかりだと思いますが)ほとんどの企業がWebサイトでサービスを展開している昨今、運営者側の積極的な宣伝・マーケティング活動なしに、Webサイト経由で十分な売上げを達成していくことは、日に日に難しくなっています。埋もれてしまっているからです。

 Web サイトはただ持っているだけでも、サーバーの費用、ドメインの費用、担当者の人件費をはじめとするランニングコストがかかります。そこに加えて宣伝・マーケティングの費用がかかってくるとなれば、きちんと費用対効果の計測はしておきたいところです。ましてやそれがGoogle Analyticsを使ってタダでできるならなおさらのことです。なお、予算計上時に上司の承認を得る必要のある立場にいる方は、きちんとデータを持っておけば、宣伝費を確保する際に、社内での稟議書も通しやすくなるでしょう。

 余談ですが、世の中にWebサイトは数あれど、中小企業レベルですとアクセス解析ツールできちんと目標設定をして、効果測定をしているサイトは、私の知る限りほとんどありません。URLをポンポンと登録するだけですし、何しろGoogle Analyticsはタダで使えます。なので、Web制作業を営まれている方は、仕事を受注した際にGoogle Analyticsの設定とかも一緒にやってあげると、お客さんからすごく感謝されると思いますよ。

 今回はここまでです。「Webサイトにおける目標の設定」と「その目標達成率を毎日きちんとGoogle Analyticsで計測しておくこと」がいかに有用か、うまくお伝えできていればうれしいです。もしGoogle Analyticsのアカウントをお持ちの方で、まだ目標設定をしていない人がいたら、今すぐやってみてくださいね。

みんながGoogle Analyticsを使えるようになりました!

 さて、最後に大ニュースを。今までは申し込み者過多による順番待ち状態が続いていたGoogle Analyticsが、2006年8月15日から誰でもすぐに使えるようになりました。詳細は以下のリンクから。
We're open! Instant access now available(Google Analytics Blog・英語)

 Google Analyticsのインストール方法は本連載の第1回に書いてあります。これを書いたときは、まだ順番待ち状態の頃でしたが、アカウント取得後のインストール方法は同じなので、導入時の参考にしてみてください。

 もうこれで、Google Analyticsを使わない手はないですね、アカウントは以下のリンクから申し込めます。もしまだアカウントを持っていない方がいらっしゃいましたら、ぜひこの機会に申し込んでみてください。

 次回は、Googleが展開する広告サービス「Googleアドワーズ」とGoogle Analyticsの連携方法について取り上げます。お楽しみに。