サイトを成功に導くWebデザイン戦略 第13回 CMSとしても高い人気を集めるblogの業界標準ツール――Movable Type(3)

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20060606/240042/
今回も引き続き、blogシステムでデファクトスタンダードとなっている「Movable Type」について、導入事例を交えて紹介します。blogシステムとは言っても、本質的にはコミュニケーション機能に長けたCMSと言える、というのが前回のポイントでしたが、今回はMovable Typeのそのほかの特徴を補足します。事例では、いわゆるblog的な利用にとどまらないCMSとしての活用例として、漫画家、楳図かずお氏のオフィシャルサイトと、blogの特徴を活かしながらFlashを全面的に取り入れた、オーガニックカフェレストラン「BiOcafe」のサイトを取り上げます。

定型更新、コミュニケーション、SEO

 これまでにも述べましたが、blog(そしてMovable Type)が急速に普及した最大の理由の1つは、コンテンツとレイアウトなどのデザイン要素を分けて管理することで、コンテンツの更新、ひいてはサイト運用が非常に簡単になることです。つまり、CMSとして見た場合、Movable Typeは定型的に記事を更新していくようなサイトで、特に有用なものだと言えます。
 もう1つはもちろん、blogの特徴的な機能──トラックバックやコメントといった閲覧者との相互コミュニケーション機能や、RSSPodcastingといった新しいタイプの情報配信機能を最初から備えており、サイトに簡単に組み込めることです。
 これらに加えて、Movable Typeの導入のメリットには、SEO(Search Engine Optimization:検索エンジンへの最適化)対策に大きな効果があることも挙げられるでしょう。ただしこれは実際には、よく言われるように blog自体に特別な効果があるわけでありません。HTMLコードの生成をシステム化することで、サイトはWebの標準に準拠した“正しく、美しい”ソースで構成されます。この結果として、検索エンジンが情報を拾いやすいサイトができます。
 つまりこれは、CMSの導入一般にも同じことが言えるわけですが、シックス・アパート河野武氏(マーケティング担当執行役員)によれば、「Movable Typeの開発チームには、この部分を得意とするエンジニアがいるため、確かに効果を上げている」そうです。

日本で需要大きい“ビジネスブログ

 Movable Typeは世界で広く利用されていますが、こと日本では、イントラネット/インターネットを問わず、企業による利用──“ビジネスブログ”というジャンルの需要が大きいのが特徴です。
 日本では「トラックバックやコメントといったblogならではの機能を、企業のマーケティング活動に積極的に使う例が多い。例えば、外資系企業で、日本支社のトラックバックを使ったキャンペーンサイトの成功例を受けて、本社が採用したケースもある」(河野氏)そうです。
 実際、こうしたニーズや企業ユーザからのフィードバックを迅速に製品に反映するために、米国生まれのソフトウェアには珍しく、Movable Typeの開発拠点は最近日本に移されています。
 企業の導入ということでは、Movable Typeが非常に高いスケーラビリティを持っている点も重要です。シックス・アパートは、Movable Typeをベースにした「TypePad」というblogシステムで商用サービスを展開しています。TypePadは、ニフティNTTコミュニケーションズといった国内の大手プロバイダーも導入しており、大量のblogを運用するシステムとして実績を上げています。
 今後は、blogの一般化がますます進み、“blog的な要素”は特別な形態としてではなく、Webサイトの一要素となる傾向が強まっていくと思われます。その意味でも、CMSとしてのMovable Typeの導入は、幅広いタイプのサイトでメリットを生む可能性があると言えるでしょう。
[2006/06/08] 出典:日経デザイン 2006年1月号 120ページより