Web2.0的キーマンに聞く:三井物産ヴィクシア坂田社長に聞く

「Feedsterの日本参入でFeed検索は普及するか?」

 2003年3月に設立されたRSS/Atomフィードの専門検索サービス米Feedsterは、独自開発の検索エンジンを用いて、特定のキーワードやニュースなど、速報性の高い情報の提供を行っています。そのFeedster に三井物産が出資したのは昨年の9月のことですが、今年になって、同社の100%子会社三井物産ヴィクシア株式会社がFeedsterの国内運営をするという発表がなされました。いよいよ日本市場でのサービス開始を目前にしている Feedsterとはどのようなサービスなのでしょうか。いわゆるブログ検索とFeed検索とは何が違うのでしょうか。三井物産ヴィクシア代表取締役社長の坂田祥司氏と事業開発本部アカウントマネージャーの宮内優仁氏に伺ってみました。

■ 総合商社 三井物産のインターネットプロジェクト

―新会社設立おめでとうございます。

坂田氏
 ありがとうございます。

―坂田さんとは実は何年か前に仕事を一緒にさせていただいています。

坂田氏
 そうでしたね。

―まず、新会社設立の経緯についてお伺いしていいですか。

坂田氏
 はい。社名は三井物産ヴィクシア株式会社です。その名で分かるように総合商社である三井物産の100%子会社です。設立登記したのが今年の2月 15日で、3月1日に営業開始しました。もともとは三井物産の中でインターネットマーケティング事業を行っているメディア事業部でのプロジェクトでした。今回の事業化で統合したサービスは他にもありまして、miems(ミームス)というEメールマーケティングサービスと、LISTOPというキーワード連動型のリスティング広告サービスがヴィクシアに移行されています。
 また、三井物産が出資している他のEマーケティングサービスである、ユニバーサルポイントプログラム会社のネットマイルと、アフィリエイトプログラムのリンクシェアとも事業シナジーを作っています。

―ヴィクシアの事業モデルは?

坂田氏
 インターネット広告やマーケティングサービスになります。基本的にはアメリカの先進ネット技術やビジネスモデルを日本に持ってきて事業化する形です。ですから、世界最先端のビジネスモデルや技術の総合インターネットマーケティング会社、といえばいいかとおもいます。特に多くのEコマース事業者をクライアントに持っていますので、そうしたクライアントの事業を支援する会社でもあるとおもいます。

―miemsやLISTOP、そしてFeedsterを組み合わせて事業化するメリットはなんでしょう?

坂田氏
 もともと三井物産では、新規の案件があってもすぐには会社を作らず、まずは中でインキュベートするんです。miemsとLISTOPが独り立ちできそうになってきた頃合いだったことと、組み合わせるとシナジーが出そうだったので一つの会社としました。先ほど話しましたように、世界最先端の新しいサービスを今後も追加していくにも、ひとつの箱があったほうがいいと考えたわけです。だから、今後出てくる新しいサービスはすべてヴィクシアを受け皿にして統合していくつもりです。

―ヴィクシアに外部資本を入れて上場を目指すようなことは考えますか?

坂田氏
 外部資本は入れるつもりがないですね。他の資本を入れると他の海外パートナーとのコンフリクトがあるかもしれませんから。われわれ自身の自由度を保ちたいと考えています。

■ 「W杯にFeedster公開を間に合わせたい」

―Feedsterについてお伺いします。彼らに投資をした経緯は?

坂田氏
 Feedsterは、(横にいる宮内氏を指して)彼がブログやRSSを研究していて、見つけました。これはいいぞ、ということになり。デューデリ(投資前の評価)をやって、昨年8月に出資して、11月下旬に日本市場でのサービスに関する契約を行いました。

―国内でのサービスはいつになりますか?

坂田氏
 日本語化もそろそろ終わり、5月中には公開したいとおもっています。

宮内氏
 サッカーのW杯の開催時期に合わせたいとおもっています。大きなイベントがあると検索は盛り上がりますから。

―Feedsterの特徴を説明いただけますか?

坂田氏
 FeedsterはFeed検索専門です。Feed検索とブログ検索はイコールとおもっている人が多いですが、違います。Feedsterは Feedだけを収集しています。例えばテクノラティだとFeedだけではなくて、ブログ自体のHTMLも収集して検索対象にしていますが、 FeedsterはFeedの全文検索だけしかしません。だから軽いし、データベースの容量も少なくてすむし、何より速く収集できるというわけです。

―検索サービスとしての規模はどのくらいでしょうか?

宮内氏
 4月18日現在で2980万Feedsです。

―それは記事数のことですか? それともFeedを配信しているサイト数でしょうか?

宮内氏
 記事数です。

―日本ではどういうビジネスモデルを考えていますか?

坂田氏
 当面はトラフィック収集と認知度を向上させることを狙っています。ヴィクシアのビジネスとしてはFeedster単独をアテにしているということではないので。

宮内氏
 仮説としてはリスティング広告をベースとはしないとおもいますが、まだ模索中です。

―Feedsterの記事更新速度はどのくらいですか?

宮内氏
 クローリングのタイミングは1時間に一回くらいですね。ただ、ニュースサイトや商用サイトなどのメジャーなページのFeedは意識的に早くクロールするようにしています。

feedpathも30分に一回ですが、Ask.jpテクノラティなどのブログ検索は数分単位です。それをどうお考えになりますか。

宮内氏
 その辺の違いはいまのところ意識しないですね。検索結果の多寡でも勝負しようとおもいませんし。Feedsterでは世界中のFeedを時系列、関連性でインデックスしていますが、スパムフィルターの自動化はなかなか優れていますよ。

―開発はアメリカですか?

坂田氏
 はい。サンフランシスコで行っています。日本独自のコンテンツの作成はわれわれが行っていくとおもいますけど。

RSSリーダー機能を具備したfeedpathを意識

―国内市場への参入前に意識するサービスはありますか?

宮内氏
 意識しているところはfeedpathですよ。

―いや、お世辞は必要ないですから(笑)。

宮内氏
 ほんとうにfeedpathを意識してるんですよ(苦笑)。Feed検索にタグ検索を加えているところは参考になるし、なによりもRSSリーダーというフロントのビューが必要だとつくづくおもっているんです。広告をとっていくにも、ユーザーに分かりやすい形で提供するにもリーダーは必要だな、と。

―ありがとうございます(笑)。

宮内氏
 feedpathも単なるRSSリーダーではなく、その先を考えたサービスとおもいますけど、われわれもいろいろ考えていかないと。

テクノラティとかgooなどはどうです?

宮内氏
 ほんとにあまり意識したことはないです。
 われわれはEコマース事業者をエンカレッジしていきたいわけで、Feedを使ったマーケティングサービスを彼らに使っていただくためにも、 RSSリーダーの普及次第だろうとおもっています。Feedsterの本格的な事業化はそれからですね。IE7が出るとRSSリーダーが死ぬ?という人もいますけど、そうはならないと考えています。例えばFirefoxライブブックマークはいいが、PCを変えたらデータを持ち運べない。gooのRSS リーダーはモバイルと同期して持ち運べますからまだいいですけど、だったらGoogleのパーソナルページを使った方がいいな、と。やはりWeb型がいいです。でも、Bloglinesも使い勝手が悪いんですよね。

IE7RSSリーダー機能を搭載すること自体は歓迎ですけどね。

宮内氏
 そうですね。

■ V for Vision, Value

RSS広告のように、Feedへの広告掲載を商品にしていくことはしないのですか?

坂田氏
 Eコマース事業者を広告主としていますので、それを考えないわけではないですし、同時に、媒体(=ブログなど)が反対の場にいるわけです。だからレベニューシェアというかアフィリエイトをやっていくことは面白いとおもいます。でもRSS広告はまだやらないですね。あわててやってもお客様が食いつかないですし。まずはFeedsterを使ってもらって、Feed検索という新しいサービスの面白さを知っていただくところから始めようとおもっています。段階を踏まないと。

―よく分かりました。ところで、最後の質問としてヴィクシアの語源を教えていただけますか?

坂田氏
 VIXIAと書くんですが、V 1 x 1 Aと分解できます。つまり、V for vision, valueと、1かける1でワントゥワンマーケティングを意味し、さらにアルファベットの一番目であるAをつけて、ビジョンとバリューをもったワントゥワンマーケティング企業として一番になる、という意味になります。

―なるほど(笑)。それではぜひ早く日本語版Feedsterをわれわれに見せてください。今日はありがとうございました。
[2006/04/28 00:00]