マッシュアップは儲かるか--大ブームの現状と可能性

文:Elinor Mills(CNET News.com) 翻訳校正:坂和敏(編集部)
2006/04/26 21:34
http://japan.cnet.com/special/story/0,2000056049,20102676,00.htm?tag=nl
 有名人の追っかけサイトから、ジョギングファン向けのオンライン万歩計まで、マッシュアップサイトが大ブームになっているのは間違いない。ただし、この先には、それをどうにビジネスに結びつけるか、という難しい部分が待ちかまえている。
 一部のマッシュアップサイトはベンチャーキャピタルから支援を受けているが、多くの投資家はこれらのサイトへの出資にあまり乗り気ではない。これらのサイトでは通常、GoogleやYahoo、Microsoftなどが提供している地図APIを利用して、使いやすいオンライン地図の上に情報を表示している。
 マッシュアップが大きな人気を集めているのは、制作がかなり簡単なためだが、投資家らが慎重な姿勢を見せる最大の理由も、まさにその点にある。つまり、成功を収めているサイトを真似て、似たものをつくることもそれほど難しくないからだ。さらに、これらのサイトがどの程度の利益につながるかも明らかになっていない。マッシュアップは、ウェブ上に現れた「Next Big Thing」なのか、それとも小さな企業やマニア向けのスタイリッシュなニッチ技術で終わるのだろうか。
 「地図を利用したマッシュアップはすでにコモディティだと思う」と、Leap Frog Venturesでマネージングディレクターを務めるPeter Rip氏は言う。「単純に2つのものを組み合わせただけで、その上にたくさんの知的財産を付加してあるわけではない。問題は、コンテンツを提供する側が見返りを欲しいと考えていることだ。実のところ、マッシュアップサイト側はコンテンツの販売代行をしているに過ぎない」(Rip氏)
 だからといって、マッシュアップがビジネスにならないと言っているわけではない。地図技術を提供するGoogleMicrosoft などはいずれ、地図上に広告を掲載するようになるとみられている。これらの広告は、表示されている地域と関連性があるため、その分売上につながる可能性も高い。さらに、「Platial」や「Trulia」などのマッシュアップサイトは、ほかには見られない特徴を十分に備えていることから、すでに投資家の関心を集めている。
 TruliaのCEO(最高経営責任者)、Pete Flint氏によると、不動産検索エンジンを運営する同社は、Accel Partnersや複数のエンジェル投資家から、800万ドル弱の資金を調達したという。
 「われわれは基本的に不動産関連の技術/メディア会社であり、マッシュアップはその情報を表示する手段だ。投資家の目から見ると、その点が非常に魅力的だった」(Flint氏)
 「The People's Atlas(万人のための大地図)」を自称するPlatialは、地図のパーソナライズを可能にし、その場所に関する話や出来事を記入できるようにしている。同社は、複数の個人投資家ベンチャーキャピタルKleiner、Perkins、Caufield & Byers、そしてOmidyar Network投資グループなどから、エンジェル資金を調達した(金額は不明)。Platialの共同創業者Di-Ann Eisnor氏はインタビューのなかで、「あれはどの側面からみても実験だったと思う」と述べている。
 「マッシュアップという新しい市場が姿を現しつつあるとは思わない。実際には、世界中の人々にとって個人の地理情報が重要であるという事実への言及に使われるなど、『マッシュアップ』という言葉自体が使われすぎだと思う」(Eisnor氏)
 Platialでは、数週間以内に自社サイトでローカル広告を発信する計画を進めているが、その手法は従来のネット広告とは異なるものになると、Eisnor氏は述べている。

マッシュアップのお勧めは不動産関係

 ベンチャーキャピタルを獲得できそうな最有力候補は、Zillow.comのように、マッシュアップに、他の提供している複数のサービスや不動産資産評価、各種情報源のデータを組み合わせている企業だ。Zillow.comは先ごろ、Benchmark Capitalから3200万ドルの出資を受けることが決まった。
 Rip氏によると、家や仕事をオンライン地図上で視覚的に見せることは、単なる機能の1つに過ぎないという。しかし、犯罪発生率の低い地域にあり、職場から30分圏内に有名小学校もある物件の価格がウェブサイトで分かれば、それは利益につながるアプリケーションになるかもしれないと、同氏は主張している。
 「これらのサイトの多くは、わずかな数のユーザーしか集められないだろう。いったい何人のユーザーが、インディアナ州の田舎町にある飲み屋の情報に関心をもつだろうか」と、Directions Magazineの編集主幹を務めるAdena Schutzberg氏は指摘する。「不動産になると対象はもっと広くなる。まずはこれで収益を確保するか、それができなければ、このモデルの長所を生かす方法を見つけ出す必要があると思う」(Schutzberg氏)
 WeatherBonk.comとSkiBonk.comという両マッシュアップサイトを立ち上げたDavid Schorr氏によると、広告以外に収益源として考えられるのは、ホテルや航空会社から紹介料を得るアフィリエイトプログラムだという。しかし同氏は、多くのアフィリエイトプログラムは「自社データの公開に消極的だ」と述べている。
 Outlook VenturesのマネージングディレクターRandy Haykin氏によると、マッシュアップモデルに対する懐疑論には、他社が提供する地図ソフトウェアへの依存など、確かにそれだけの理由があるという。
 「マッシュアップの課題は、その運命が他社に左右される場合があることだ。彼らの運命は、Googles、Yahoos、 Microsoftsが提供するオープンコンポーネントが握っている。現在までのところ、独立運営できる会社になれそうなマッシュアップはない」(Haykin氏)
 複数のマッシュアップサイトを毎日カタログ化しているGoogle Maps Maniaの生みの親、Mike Pegg氏は、GoogleAPIから手を引くことはなさそうだが、「サポートを提供しないところにコンセプト全体が依存しているのは、ビジネス上リスクがある」と指摘する。

ツールの無償提供

 サポートを受けたり、自らの作成したマッシュアップの商用化を行いたいと考えている企業には、MicrosoftやAmerica OnlineのMapQuest、Placebaseという新興企業が有料で技術をライセンス供与している。
 しかし、大半のマッシュアップが利用しているのは、GoogleやYahoo、 Microsoft、MapQuestが無償で公開しているAPIだ。そして、これらの企業は一般に、マッシュアップサイトに対して、有料で地図を使わせることや、広告販売以外の方法で利益を得ることを認めていない。Googleなどの各社はこの技術を無償で提供し、開発者がそれを使ったマッシュアップサイトを制作できるようにしており、いずれはこれらのなかに広告が掲載される可能性もある。
 Googleは先ごろ、自社の地図APIに関するサービス条件に修正を加え、大量のアクセス(1日あたり50万ページビュー以上)を集めるマッシュアップサイトに対して、Googleに連絡を取るように求めた。同社の開発者向け製品担当マネージャー、Bret Taylorによると、これはトラフィックの増加に対応できるだけの帯域幅を同社が準備できるようにするための措置だという。また、Googleマッシュアップで使われている地図に広告を掲載する際、その90日前に開発者に通知していくとしているが、ただし地図への広告掲載に関する計画があるとは認めていない。
 「われわれは必ずしも直接的なやり方で利益を上げようとしているわけではない。いまのところ、広告プログラムを開始する予定は1つもない」(Taylor氏)
 Microsoftもまた、地図への広告掲載ならびに各マッシュアップとの売上分配を計画していると、同社のTom Bailey氏(Microsoft Virtual Earth担当マーケティングディレクター)は述べている。「われわれは、これらの数多くの顧客と協力しながら、われわれにとって最適な売上分配の方法であり、かつ開発者にとっても非常に魅力的であるようなやり方を見つけ出していく」(Bailey氏)
 マッシュアップサイトのなかには、Platialのように、直接的な広告の表示を望まないところもあるが、何らかの売上分配があれば気にしない、という者もいる。
 「私にとって、問題にはならないだろう」と、人気のマッシュアップ「Gmaps Pedometer」を制作したPaul Degnan氏は言う。「道路地図や衛星画像があるかぎり・・・わずかばかりの広告が出ていても、それが邪魔になることはないだろう」(Degnan氏)
 「なかには、広告を邪魔に感じる者もいるかもしれない。しかし、そのためにマッシュアップを利用しなくなる人がいるとは思わない」(Degnan氏)
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