黒葛原 寛のWebマネジメント講座 第4回 3次元的プライベートメディアのアーキテクチャーを考える

黒葛原 寛 (つづらはら かん)
ソニーグローバルソリューションズ(株)ウェブサイトマネジメント部 統括部長

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20061227/257908/

アーキテクチャ

 専門用語や外国語を文章や話し言葉の中で使うことにかなり抵抗、いや不快感を感じるのだが、一般的に使用されだしたのでやむなく使う事にする。

 アーキテクチャー(Architecture)というと通常は建築物、建造物を一義的に意味する場合が多い。多分最初にIT分野で使い始めた人は建造物のイメージが脳のなかにあったのだろう。似たような言葉でストラクチャー(Structure)やフレームワーク(Framework)があり、多分どれも同じような事をイメージしているが、こちらはどちらかというとその 『物』の構造や構成、組成を指すことが多い。

 ウェブサイトをイメージの中での構造物だと仮定すると、あるフレームワークでつくられたアーキテクチャーであるということができる。

ウェブサイトのアーキテクチャ

 一定の考え方や方針、コンセプトもなくアーキテクチャーをつくることはできない。これは、サイトに限らず何においても同様だろう。通常、サイトのコンセプトや方針つまりVOICEを出すのは、そのサイトのオーナーであろう。

 このVOICEを受け、形にしていくのがプロデューサーであり現場監督であるディレクターの仕事になる。サイトの根幹をなすサイト構造 さらには構成されるコンテンツをどう配置し、どのように発信するかまでの情報構造(Information Architecture)のデザインをどう考えるかが、その後のサイトを大きく左右する要となる。

 ウェブデザインというと、一見、従来の宣伝広告等の流れでグラフィックデザインの範疇で捉えられがちだが、それは大きな間違いである。グラフィックデザインはウェブデザインの中ではほんの一部の表層的な領域にすぎず、その逆のアプローチ(つまりグラフィックデザイナーがウェブ構築を担当する)は考えられないし、必ず失敗する。

 もちろん、優秀なグラフィックデザインは必要であるがそれはウェブのアーキテクチャーから見ると一握りの部分であるという共通認識が必要だと思う。情報内容に関するロジカルな考え方、冷静な判断と分類能力‥‥。これはどちらかというと情報整理学に近いかもしれない。膨大な文献を秩序正しく分類整理する、図書司書の方々が学んだような手法や考え方などは多いに参考になるだろう。

 ウェブサイトの場合は2次元的な印刷物と違って、時間と空間をコントロール(管理)できる感性も必要である。更にITの上で成立しているためITの基本的な理解もあれば更に世界がひろがるだろう。

 これはまさしく3次元的プライベートメディアなのである。この特性をよく理解した上でのインフォメーションアーキテクチャーのデザインが求められる。

 その具体的な手法や技術そのものは、デザイン(設計)のくくりのなかで専門家の方々の意見を参照していただくのがいいだろう。情報構造がきちっと設計されたウェブサイトは顧客側からもすぐ感じ取られるものである。自分、自社のサイトはこの情報構造の設計がどのようになされているのか確認されるいい機会になれば幸いだ。

情報の作成、提示、表示手法

 情報をあらかじめ作成しておき、一定の考え方でアーカイブし、顧客からのリクエストでそれを提示、表示していくという静的な方法が従来の一般的な手法であった。ここ数年、リクエストに応じてデータベースから必要な情報を組み合わせて動的にページを作成し表示するというサイトを多く見かけるようになってきた。

 この場合、順列組み合わせで種々の見せ方ができるため顧客への多様なアプローチが可能となる。しかし、その反面、静的なページがサイト内にないため、各種検索エンジンにひっかかりにくいというデメリットも発生する。これに対する対策( SEO)も各種考えられており、ちゃんと対処すればこの課題も解決しているようである。

 つまり、新しい手法や技術の導入や採用も大いに結構だが、そのことから派生する各種デメリットもきちんと分析し、対応できるものは速やかに対応していくという姿勢が必要だろう。

 あるショッピングサイトで、多額の設備投資で最新の表示技術やサイト構造に変更し、意気揚々とリニューアルオープンしたが、リニューアル前に比べて数万ドル/月 売り上げが落ちたという事があった。

 これは、ページ生成手法を動的にしたことでサーチエンジンにひっかからなくなったのが大きな原因であった。その後SEOをおこない、無事に業績回復したようだが、このような話があちこちにゴロゴロころがっているのも、このあたりのもろさ、歴史のなさ(人材不足?)を物語っているのかもしれない。
(筆者:黒葛原 寛)  [2007/01/10]

Web2.0的キーマンに聞く 「B2Cサイトとしてロングテールは強く意識」ケンコーコム後藤社長

http://enterprise.watch.impress.co.jp/cda/web2/2006/12/27/9338.html

 今回のゲストは、健康関連商品のオンライン販売を手がける、ケンコーコム株式会社の後藤玄利社長です。ケンコーコムが成功した背景にはどのような秘密があるのでしょうか。

■B2C市場に期待するも集客に苦労したスタートアップ時期

―まずは自己紹介をお願いできますか?

後藤氏
 ケンコーコム自体は70000以上の健康関連、ペット、介護など、を扱っているECサイトです。会社を作ったのは1994年で、最初はヘルシーネットという名前でした。ネットを始めたのは2000年です。

 実家が大分で、大正時代から続いている家庭医薬メーカーをやっていまして、それが理由で健康関連商品を扱っているわけです。

 僕自身は、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)でコンサルティングをやっていたんですが、1994年にヘルシーネットという名前で、ダイレクトメールを使っての通販を始め、その後Webを使うB2Cサイトとして2000年の5月にケンコーコムを開設しました。社名をケンコーコムに変えたのは2003年です。

―ネット販売をしようと思ったきっかけは?

後藤氏
 1999〜2000年にWebが急速に普及する中で、B2C市場が成長するという気がしたんです。ネットでデータベースマーケティングができるようになったわけで、CRMをPCベースでやれると思ったのが最初ですね。

 そこで、健康に関するB2Cを作ろうと考えました。ヘルシーネットでは実家の商品で、ききまんねん(喜喜萬年)という、さるのこしかけ(霊芝)をせんじたドリンクだけを売っていたのですが、ケンコーコムは50商品くらいではじめました。

―1999年から2000年というと、ネットバブルの後期ですね。

後藤氏
 立ち上げ期にちょうどネットバブルがはじけて、大変な思いをしました。B2Cのeコマースは将来有望という考えには変わりはなかったのですが、その当時はネットでモノを買う人は少なかったし、そもそも集客が大変でしたね。いいB2Cサイトを作ったとは思っても、どうやって顧客を集めればいいか分からないわけです。広告代理店に相談しても、「バナー広告を出せば?」というだけで…。とにかく、Webサイトに人が来ないことには何も始まらないので、 1カ月で2000万円くらい広告費を使ってみたりしました。最初の3〜4カ月で合計3〜4000万円使ってしまいましたね。ところがそれだけ広告費を使っても、月間売上は70万円くらいにしかならなくて、それまで5年間やってきていた蓄えは一気になくなって、資金繰りが大変厳しくなりました。

■品ぞろえの数と売り上げの相関関係

―資金はどうされたのですか?

後藤氏
 ベンチャーキャピタルから必死で金を集めました。事業会社からも投資をもらって急場をしのぐことはできました。でも、資金は入ったが、いずれにしても集客が大変で、難しい事は変わらないわけです。そのときに言われてたマーケティング手法は何でも試しました。メルマガや懸賞(ChanceITなど)も試しましたよ。結局、一人の購入客を獲得する金が数万円に達していたことに気がついたときには、バカバカしくなりました。

 クーポン券をメールでばらまいて、それを使って買ったら割り引き、というような手法の方がかえっていいくらいと思ったほどです。とにかく、集客方法が分からなくて迷走していたというのが本当です。必要コストと売り上げをトラックしていたが、どうやっても数万円かかっていて、これは結局B2Cというビジネスは成り立たないのか、とさえ思いました。

―それが好転したのはどういうきっかけでしょうか?

後藤氏
 半年から1年ほど苦闘したあとで、ふと気がついたんですが、なんだかんだいって、月商は伸びてきてはいたんですよ。これはなんでかな、と考えてみると、取扱商品数と月商に相関関係があるように思えたんです。調べてみると、月商を商品数で割ると、1万円くらいになっているわけです。つまり、商品数を1つ増やすと、月商が1万円上がるんです。これはどういうことかと思ってサイトへの訪問者数をいろいろと調べていると、Googleからのアクセスが急増してきていることが分かりました。

 Yahoo!トラフィックの中心だった時代には、Yahoo!ディレクトリからみんながアクセスするわけで、サイト単位の集客しかありません。ところが、Googleを使うと、検索結果はページ単位ですから、ページ単位の集客が可能になってきているわけです。そこで、スタンフォード大の論文などもみて、Googleを研究してみると、この検索システムがこれからの時代にマッチしていることに確信が持てました。Googleが良いと思うサイトを作る事がユーザビリティをあげることだ、と気づいたんです。そこで、そういうサイトにケンコーコムを作り直そうとしたわけです。

―具体的にはどのようにしたのでしょう?

後藤氏
 今にして考えると商品数が多いとページ数が増える、お客さんのキーワードにヒットする可能性が高まる、お客が来る、売り上げがあがる、という相関関係があったんです。つまり、商品数を多くすればするほど、検索されて集客につながる可能性があるということです。

 そこで、広告を出すのはやめました。とにかく品ぞろいを増やす事を考えたんです。そしたら広告をしなくて売上があがるというサイクルが見え始めました。

■どん欲に品ぞろえを拡充していくことが大切

―そのサイクルが見えて、事業そのものにどのような影響がありましたか?

後藤氏
 一番大きなことは、物流の方法を変えた事です。初期のころは物流を外部の会社にまかせていましたが、品揃えを増やすにつれ、だんだん追いつかなくなって、在庫管理が難しくなってきました。では、在庫をしないで品数を増やすのはどうしたらいいかと考えたんですね。もともとは福岡の卸しから東京の倉庫に持ってきて、そこから全国に出していたんです。首都圏に顧客が多いので、お客様に近いところに商品を置くというのは理にはかなっているわけですが、それでは在庫が減らない。そこで、倉庫を福岡の卸しのすぐ近くに置いたんです。一種のカンバン方式ですかね。

―デルモデルにも近いですね。

後藤氏
 そうかもしれません。お客様に近いところではなくサプライヤーの近くに倉庫を置くことで、急速に在庫を減らすことができました。これで問題が解決し、商品の種類も拡大させることができるようになりました。

―競合他社の追随はありますか?

後藤氏
コンペティターですか?爽快ドラッグ小林製薬グループ)が近いですかね。商品数でいうと2万〜3万点くらいあるはずです。ほかにはあまり見当たりませんね。

 結局この業界は、物流のインフラを作るために投資が必要なので、それが参入障壁になっていると思います。当社は福岡に2000坪の自社倉庫を持ち、宇都宮には1000坪の倉庫を借りています。配送はヤマト運輸に委託していますが、相応の投資をしているわけです。

 もう一つは、リアルの世界の常識でいうと、「小売りをやるなかでいい商品をどうやって選ぶか」、ということが大事と考えがちです。いかにして売れる商品を見つけるのが大事と思い込みがちなんですね。しかし、Webにおいてはその常識が足かせになる場合があると考えます。

 既存のバイヤーは自分が選ぶ商品がいかに良いか、悪い商品をいかに切り捨てるかを考えて、効率的な品ぞろえをしようとしますが、eコマースではむしろ、どん欲に取扱商品を増やして取り込むことが大切だと思っています。玉石混交かもしれないが、売れるかどうかはユーザーが決めるべきなんです。販売側が売れるかどうかを判断する必要はないと思います。ロングテールをどんどん長くしようと考えないとならないわけです。

 でも、リアルのプレイヤーはそういう割り切りができずに、なかなかネットに入って来られない、というところだと思います。

―逆にカテゴリ拡張していくうえで気をつけているところは?

後藤氏
 健康に関わることで、かつロングテールを生かして商品のバラエティが飛んでいる分野であれば手をつけようと思います。また、近所では必ずしも手に入らない分野にしぼる事ですね。

―送料はいくらですか?

後藤氏
 3000円までは送料490円。3000円以上は無料としています。

ロングテールをますます長くして物流インフラに成長したい

―最近ケンコーコムWeb 2.0企業として紹介されることが多くなっていると思いますが、それについてはどういう印象を持たれていますか?

後藤氏
 Web 2.0自体、何を持っていうのかはわからないですが、ロングテールのeコマースであるという認識はあります。ロングテールに対応すると、それに対して幅広い商品に対して、情報を充実させていくことになります。ということは、供給者側からの情報だけでは十分ではないですね。だから、ロングテールに対応するにはユーザーの実際の声を入れていく事は重要なんだとは思っています。

―その方法は?

後藤氏
 まだ模索中です。当社では、現在の7万点近い商品数に対して、約2000社の仕入れ先、そして1万に近いメーカーと取引しています。来年早々にはまず、そうしたメーカー側から、もっと突っ込んだ情報を提供していただくためのプラットフォームを用意できればと思っていますが。

―ユーザーのクチコミを利用することはいかがでしょうか?

後藤氏
 現在はYahoo!知恵袋ケンコーコムをつないでいます。健康商品を扱うことは、薬事法などの規制がある分野なので、コンプライアンス上、直接Q&Aを行うわけにはいかないんです。健康商品ビジネスの何が難しいかといって、健康上の悩みや効果を知りたい、ということがニーズであるのに、一方でコンプライアンス的には効果効能を訴えてはいけない、という難しさがあります。そこでYahoo!のようなパートナーと組むことによって対応しているのが現状です。とにかく、周辺のプレイヤーに集積してもらう目的で、付加情報を集めている状態で、そうして集まった情報をWebサービスで広く提供することも考えていきたいですね。

―分かりました。では最後に2007年の抱負をいただけますか?

後藤氏
 大きく軸は3つですね。1つ目は、既存の商品の情報を拡充すること。2つ目は流通サービスの幅広い展開。3つ目は、カテゴリを、従来より広げていくことです。

 物流インフラとしては、ドロップシッピングをやることを考えています。ケンコーコムは健康に関するロングテールを持っているわけで、当社ほど多くの商品を扱えない業者に商品を提供して、フロントストアとして売っていただけたらと考えます。

 結局のところ、eコマースの売り上げに対するドライバーは品ぞろえです。でも、ありとあらゆる健康のサイトがロングテールに対応しようとすると、共倒れしてしまいます。自分でハンドリングしない商品はケンコーコムから仕入れてくれればいいと思ってもらえばいいわけです。そうすると、さらに僕らはロングテールを長くしていくことができます。年に1回くらいしか売れない商品ももっと売れるようになります。そういうプラットフォームに徹することをやりたいですね。

―今日は長い時間、ありがとうございました。

小川 浩(おがわ ひろし)2006/12/27 00:00

Web2.0的キーマンに聞く 「海外旅行商品の取り扱いナンバーワンを目指す」GTO後藤氏

http://enterprise.watch.impress.co.jp/cda/web2/2006/12/26/9334.html

 今回のゲストは、ダイナミックパッケージという、ホテルと航空券の組み合わせ自由なパッケージツアーを武器に成長するオンライン旅行会社、グローバルトラベルオンライン株式会社の取締役副社長兼COO、後藤淳一氏です。

■鉄鋼のeコマースからWebの世界へ

―まずは自己紹介をお願いします。

後藤氏
 グローバルトラベルオンライン(以下、GTO)は、住友商事の100%子会社です。私も、社長の谷口も、住商からの出向です。私は入社以来ずっと鉄鋼部門におりましたが、2000年に異動して、鉄鋼流通のeマーケットプレースの運営にあたることになりました。2000年は、ちょうど米国で鉄の流通サイトや、eコマースなどがでてきた時期で、鉄鋼取引の主流が電子商取引に変わってくるという予測に、戦々恐々としたものです。実際にはそうはならなかったわけですが(苦笑)、なかなかそうは言えない状況でしたね、2003年に鉄鋼のeコマースからみなが撤退し始めるまでは。

 むしろうまくいったのは、住商グレンジャーという、事業所や工場に軍手や電池、研磨剤などの間接資材を卸すネットストアで、いまではモノタロウ(MonotaRO)という名称に変わって東証マザーズに上場を果たしています。

―鉄のeマーケットプレースがなくなってからはどうされたのでしょうか?

後藤氏
 鉄鋼に戻ろうとも思ったんですが、それよりも何年かで得た経験を利用して、何か新しいことをやってみたいと考えました。アイデアがあるならやってみてもいいという会社からのお墨付きをもらって、2004年に半年間くらいかけて、いろいろな案件を考えました。そこで目を付けたのが、ダイナミックパッケージという旅行プランの取り扱いです。

ダイナミックパッケージとは簡単にいうとどのようなものですか?

後藤氏
 航空券とホテルだけを組み合わせた割安な海外パック旅行を、インターネットで予約・購入できるサービスのことです。欧米では非常に盛んなモデルなのですが、日本では当社が始めるまで存在しなかったプランです。通常のパッケージと違うのは、この組み合わせを自分が好きなように変更し、プランを作り上げる事が24時間可能であるという点です。

 2005年にシステム開発に着手しまして、航空券については航空会社へダイレクトに発注できるようにしました。ホテルは自分たちで仕入れてデータベースを作っています。このような旅行商品を募集型企画旅行というのですが、それを扱うための免許も取得しました。それから会社を作り、2005年7月に会社を3億円の資本金で立ち上げたわけです。

■スタティックパッケージからダイナミックパッケージ

―会社を立ち上げてから、すぐにダイナミックパッケージでの企画旅行を販売し始めたのですか?

後藤氏
 いえ。いろいろと準備が必要だったので、実際に始めたのは2005年10月です。最初は取り扱える都市の数がわずか3都市にすぎなかったのです(笑)。現在は南米とアフリカを除く、世界の100都市を取り扱えるようになりました。

ダイナミックパッケージという企画旅行商品にこだわる理由はなんですか?

後藤氏
 旅行に慣れた人間は、パッケージではなく、好きなように旅程を作りたいんですよ。いわゆるパッケージツアーとは違う、自分だけの旅程がいいんです。しかし、さまざまなWebサイトでチケットやホテルなどをバラバラでとるのは面倒ですし、高くなる。なぜかというと、航空会社もホテルも、バラ売りについては安売りしていないからなんです。

―確かに。それをどうやって安くするんでしょうか。

後藤氏
 まずは、航空券とホテルの宿泊だけを扱うようにして、一般のツアーにつきものの、現地空港からの送迎はなくしました。この送迎サービスがあると、リムジンバスやバスなどのルートに載っていないホテルは必然的に仕入れ対象から外れてしまいます。逆にいえば、送迎をやめればホテルの仕入れが自由にできるわけです。

 あとは、当社は店舗も持たないしパンフレットも用意しません。人手を介さず、ネットから完全に自動で予約してもらいます。人間がやるのはお金をいただいたことを確認するだけです。eチケットなので、紙のチケットを渡す必要もありません。お客様にスムーズにチェックインしていただくだけです。これによって、他社よりもはるかに低コストで旅行を組むことができるわけです。

 システムも柔軟に作ってあります。可能な限り選択肢を与えて、多様な航空会社を選ぶことができるようにしているし、ホテルもなるべくたくさん峻別(しゅんべつ)して表示しています。値差も結構あるので、値段をマトリックスで見られるようにしています。

―どのくらいの自由度があるのでしょう?

後藤氏
 何泊であろうが、それにあわせて航空券のレギュレーションをあわせますので、たとえば7泊でも、80泊でも可能です。部屋別の人数なども、子供の添い寝なども可能なように、選択できるようにしている。大人と子供あわせて、1名から9名までの対応です。

 いままでの、自由度の少ないパッケージはスタティックパッケージと呼ばれています。これに対して動的に、自由にプランを組む事ができるので、ダイナミックパッケージという言葉が生まれたわけです。価格についても、日々変化する料金を動的にシステム化しているのが特徴です。

―Webもスタティック(静的)Webからダイナミック(動的)Webへの変化が、Webの2.0化と呼ばれています。社会全体がそのように動いている、ということですね。

■インターネットは能動的なメディア。オンライン旅行サービスは成長し続ける

―競合他社はどういうところがありますか?

後藤氏
 2006年2月に海外旅行のダイナミックパッケージ楽天トラベルがはじめていますが、そのくらいですね。大手の旅行会社もそのうちには、やりはじめるかもしれないですが。

ダイナミックパッケージにこだわらない場合はどうでしょう?自由度を犠牲にしても安い方がいいというお客はいないのでしょうか?

後藤氏
 プランの違いは別にして、同じ条件にした場合は当社のほうが2〜3割総じて安いのです。なぜかというと、まず現地のホテルなどとダイレクトに契約しており、中間マージンを払っていないので、価格メリットがあるわけです。

 また窓口も持たない会社ですから、大手旅行会社ほどのマージンを取らなくても十分儲かります。予定していた予算より料金が安いので、エコノミーからビジネスクラスにアップグレードしたり、予定を延ばしてもう1泊したりするようなお客様も増えました。

―客層はどのような感じですか?

後藤氏
 平均して40歳。男女比は51:49、ほぼ均等です。女性は30代後半が多いですね。夜中に予約して来週海外にいく、というようなお客様が多いです。

―米国市場と比べて日本の市場はどのくらいの規模でしょうか。

後藤氏
 米国の旅行市場は20兆円ほどですね。オンラインが占める割合はすでに50%ほどに達しています。Expedia、Travelocity、 Orbitzが上位を占めています。日本は国内旅行が6兆円、国内が4兆円ほどです。そのうち、オンラインは5000〜6000億円とみられています。米国に比べるとまだまだ小さいですが、それでも年率30%の伸びを示しています。

 旅行者の数をみると、年間のべ1800万人ほどが海外旅行をしています。バブルのころは、みんなが年に1回ずつ海外に行くような勘定でしたが、最近は、行く人は年に10回以上行くけれど、行かない人はまったく行かない、というように明確に分かれてきたようです。特に若い人が行かなくなりましたね。ケータイとゲームにお金を使いすぎるせいだといいますけど。


―オンライン旅行サービスの市場が伸びていくなかで、競争が激化すると思いますが、GTOとしての見通しはどうでしょう?

後藤氏
 インターネット自体は能動的な媒体です。自分で探す人に向いているメディアです。旅行会社の店頭に行って、いいパッケージがないかを探すような人とは、当社のユーザーは違っていると思っています。自分で行きたいところを考えて、好きな旅行のプランを組み立てていく、能動的なユーザーをどんどん増やしていくことで成長できると思っています。

 また、システムも拡大して、ユーザビリティを良くした、旅行を楽しめる良いサイトを作りたいですね。それによって、ホテルとエアだけではなく、レンタカーやクルーズなどのオプションについても対応するようなシステムを作っていきたいと考えています。そういうことをやりながら、2008年には海外旅行の専門サイトとしては日本一を目指したいと思っています。

―わかりました。今日は長い時間、ありがとうございました。

小川 浩(おがわ ひろし)
2006/12/26 00:01

JWord、キーワードでプロモーションサイトに誘導できる広告サービス“CMワード”を開始

2006年12月25日
http://biz.ascii24.com/biz/news/article/2006/12/25/666860-000.html

JWord(株)は25日、テレビCMや新聞広告にあるキーワードからユーザーをプロモーションサイトなどに誘導できる企業向け広告サービス“CM ワード”の提供を、同日付けで開始すると発表した。利用料金は、1ワードにつき月額21万円。開始日/終了日は自由に設定できる。

“CMワード”は、企業がキャンペーン名などのプロモーションワードを登録すると、ユーザーがウェブブラウザー(※1)のアドレスバーにキーワードを入力するだけで自社のウェブサイトにアクセスできるようにする、検索キーワード広告サービス。検索サービス“Excite”など同社と提携している検索サービスでユーザーがそのキーワードを検索すると、検索結果画面で自社のウェブサイトへのリンクの横に専用のマーク“CMマーク”を表示させる機能も用意されている。なお25日現在、検索結果画面で“CMマーク”を表示するのは“Excite”のみで、それ以外の検索サービスでは “JWord”の専用マークが表示される。
※1 同社が提供する日本語キーワード検索サービス“JWord”のプラグインのインストールが必要

同社はこれまで、自社の会社名/商品名などの固有名詞を登録する広告サービス“レギュラーキーワード”と、自社の商品/サービスに関連したキーワードを登録しておくことで自社のウェブサイトへユーザーを誘導する広告サービス“プレミアキーワード”を提供してきたが、“CMワード”では、固有名詞以外のプロモーションワードも登録できるようになった。同社では、テレビCMや新聞広告にキーワードを載せ、それをユーザーにインターネットで検索をさせるクロスメディア広告に有効としている。

■プレスリリース (http://www.jword.jp/company/info/info_ne...)
JWord (http://www.jword.jp/company/index.htm)
(編集部)

新規にドメインを取得・Web サイト開設する場合の SEO メリット

著者: 株式会社アイレップ ▼2006年12月26日 10:00 □国内internet.com発の記事
http://japan.internet.com/busnews/20061226/8.html

インターネット上おける住所でもある"ドメイン"。このドメインSEO を行う上で非常に重要な意味を持っている。昨今、ナショナルクライアントと呼ばれる大手企業は各サービス・プロダクトごとに専用のドメインを取得してサイトを展開している。この手法は単にブランディングのためにしか効果を発揮できないのだろうか?今回は SEO 観点から独自ドメインの優位性を考えてみる。

例えば主要商材・サービス以外の新たなサービス、キャンペーンサイトをリリースした際、どのようにして Web サイトに掲載するだろうか?おそらく既存のカテゴリ以下の他サービスと同様のディレクトリに載せるであろう。通常はこのようにコンテンツを追加することが一般的である。しかし、SEO 観点で考えた場合、新たに別途ドメインを取得して Web サイトを立ち上げることが対策に有利に働くケースも存在する。

新規ドメインによる Web サイト開設については以前の記事「Google 『エイジングフィルタ』との付き合い方」で紹介したように Google においては新規ドメイン(の Web サイト)が上位に表示されるまでは時間を要してしまう。これでは新規ドメインを取得したとしても意味がなくなってしまう。ただし、このことは短期的に見た場合であって、中長期的に見るとメリットを見出すことができる。

まず、第1の大きなメリットとして被リンクとしての効果を挙げることができる。新規にドメインを取得した場合は運営主体は同じ企業であっても全く別のドメインで Web サイトを展開するため、運営する Web サイト同士でリンクを張った場合に第三者からのリンクという認識となる。つまり新たなドメインでサイトを展開した場合、外部リンクとしての効果を期待することができる。

第2に Web サイトのテーマを明確に伝えられることが挙げらる。1つのドメインに対して様々なコンテンツを追加することで、情報過多状態になり検索エンジンから見た場合、何についてのサイトであるか判断しづらくなる。これに対し特定のテーマに沿ったサイトを構築することで、何のトピックについてのコンテンツを集めた Webサイトであるかを検索エンジンに明確に伝えられるとともに、関連性の高いリンクを集中させることも可能になる。

ただし、新たなドメインで展開することはメリットだけではない。別ドメインにした際、1ページのみでは全く意味がないサイトとなってしまう。ユーザーにとって意味を持つサイトとして公開する必要があり、コンテンツを充実させることが必要である。SEO の目的のみでコンテンツの質・量が少ない Web サイトを立ち上げることは意味がないことに注意してほしい。また、通常よりも多くのコンテンツを用意することも必要となるし、コストの面においてもドメインの維持費、サーバ費用が発生する。

以上、メリットとデメリットがある新規ドメインによるサイト展開だが、中長期的に SEO を考えてるようであれば重要性は非常に高い(SEO 自体通常は長期間を要する)。ただし、コンテンツ内容が充実していることが重要であり、全てのコンテンツを別ドメインで展開することが SEO に繋がる訳ではないので注意が必要である。
(執筆:株式会社アイレップ SEO チーム 畠山充)

紙媒体からWebサイトへ誘導するサービス、アイディーエスが来年3月に開始

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20061222/257622/

 「雑誌や新聞、チラシやポスターといった紙媒体による情報発信と、インターネットを使った情報発信を融合させたい」――。アイディーエスの熊谷卓也社長は、来年3月15日にサービスを開始する「Q転直Pa」の目的を、こう語る。Q転直Paは、URL情報を含んだQRコード2次元コード)を携帯電話で読み取ると、そのURLをユーザーのパソコンに転送するサービス。QRコード発行側は有料だが、ユーザーは無料で利用できる。

 現在のQRコードの使い方としては、携帯電話が搭載するブラウザで直接Webサイトにアクセスさせるのが一般的だ。これだと、たとえフルブラウザであっても携帯電話の画面の制約を受けてしまう。一方、紙媒体に自社のWebサイトを記載しても、ユーザーはパソコンで稼働するWebブラウザ上でわざわざURLを打ち込む必要があるため、アクセスしてもらえる確率は高くない。最近はURL入力の負荷を下げるために「(検索サイトで)『○○』と検索」などとする企業が増えているが、検索サイトで常にトップに表示されるとは限らないし、検索連動型広告を使うと費用がかかる。

 そこで、QRコードに自社のWebサイトのURLを埋め込み、携帯電話でそのQRコードを読み取ると、事前に指定したメール・アドレスにURLを転送するようにしたのがQ転直Paだ。初めて利用する際には転送先のアドレスを登録する必要があるが、2度目からは発行されたIDとパスワードを入力すれば、登録したメール・アドレスに転送される。

 無料のポータル・サイトを用意しており、そこにURLを転送することもできる。自分用に用意されたポータル・サイトにアクセスすると、Q転直Paで転送したURLが一覧表示される(写真)。

 ユーザーは携帯電話で読み取るだけなので、QRコードに埋め込むURLは長くても構わない。例えば、チラシ広告で掲載した個々の商品ごとにQRコードを掲載し、商品別のページにアクセスさせることも容易にできる。

 この10月からベータ版としてサービスを提供しているが、「3カ月弱で50社から問い合わせがあった。新聞広告にQ転直Pa用のQRコードを掲載した企業もある」(ITソリューション営業部の泉谷章 部長)という。

 Q転直Paのサービスは、デュプロと共同で提供する。QRコード発行の価格は、QRコード数100、アクセス数1000までの場合で月額5万円。アクセス数が1000を越えると別チャージがかかる。今後、QRコードの数やアクセス数の組み合わせで、複数の料金体系を用意する予定。
(小原 忍=日経コンピュータ)  [2006/12/22]

サイトをアクセシブルにするマネジメントの法則 紙媒体とWebの違いを理解する

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20061226/257783/

前回まで2回にわたって、Webアクセシビリティの基本ともいわれるalt属性について述べてきた。alt属性によって代替情報が指定できることは、Webならではの特徴である。
では、何故alt属性は基本とされるのだろうか?紙媒体の場合、画像などの情報を視覚以外の方法で得ることは難しい。しかし、Webでは代替情報が用意できるおかげで視覚以外の方法でも情報にアクセスすることが可能になる。ということは代替情報がなければその情報にアクセスできない環境がある、ということだ。alt属性の提供がアクセシビリティの基本とされるのはこのような理由による。

一般にWebは紙媒体と比べてアクセシブルであると言われる。しかしながら、情報提供者側がその特性を理解していないために、Web本来の力を生かしきれていないということが多いのが現状だ。そこで、今回はWebを理解する為のキーポイントとなる紙媒体とWebの違いについて、考えてみたい。

紙、Web双方のメリット

ひとくちにメリットといっても非常に多岐に渡ってしまうので、本連載の趣旨に則り、アクセシビリティの観点から両者の特徴を比較してみることにする。

紙媒体のメリット

紙媒体のアクセシビリティ面でのメリットとしては、情報を入手する際に特別な装置が必要ない、という点が挙げられる。この点では、現時点においていわゆるデジタル・ディバイドが存在するWebと比較してアクセシブルであると言える。無論、視覚に依存する(もしくは点字印刷であれば、視覚または触覚に依存する)という大きな問題点はあるものの、基本的には情報受信者側のコストの負担が少ないということはメリットであるといえるだろう。

また、基本的には常に同一の見た目を提供できるという点も、紙媒体のメリットではあるが、これも視覚に依存していることが前提であることを忘れてはならない。

Webのメリット

一方、Webの場合はどうであろうか?まず、既に述べているように、alt属性をはじめとする代替情報を提供できる、というのは大きなメリットだ。これによって、画像や音声など特定の感覚に依存するコンテンツを他の手段で理解可能な情報に置き換えて受信することが可能になる。

画像などの視覚的な情報にテキストによる代替情報を付加する事で、非視覚的な環境でも内容が理解できるようになる点に加え、検索エンジンなどのプログラムでもデータを利用しやすくなるというのも大きい。音声や動画などでも同様のことが言えるだろう。

さまざまな方法で情報を受信できる、ということもアクセシビリティの観点からは大きなポイントである。多くの人がこの記事を読むのに使用していると思われる、「デスクトップPCとディスプレイとWebブラウザ」という組み合わせはもちろんのこと、音声ブラウザをはじめとする支援技術、いわゆるインターネット対応のTV、家庭用ゲーム機、PDAや携帯電話、もしくはPCを利用する場合でも、RSSリーダーや紙媒体への印刷など、既に非常に多岐に渡る方法があり、今後はさらに多くの利用法が考えられていくものと考えられる。

Webのメリットを活かす為に

では、上記のようなWebにおけるメリットを最大限活用する為にはどのような点に注意してサイトを作成すべきなのであろうか?

適切な代替情報を提供する

なんといっても必要に応じて内容にふさわしい代替情報を提供することである。これにより、情報の受信が特定の条件に依存しにくくなる。ただし、現状では受信側の技術も改善の余地はまだまだある。今後は発信側、受信側ともにWebのポテンシャルをもっと引き出していく必要があるだろう。

文書の構造と表現を分離する

構造と表現の分離するという以前に、まずしっかりとした文書構造を持つことが非常に重要だ。前述のとおり、Webサイトにアクセスする方法は非常に多岐に渡っている。例えば大型のディスプレイと携帯電話では、表示領域に明らかな違いがあるとこは想像しやすいだろう。それぞれの画面表示(もしくは音声出力、点字出力など)に適応できるようにするには、さまざまな出力形式にあわせられるような文書構造になっていることが前提なのだ。つまり文書構造は自己完結した状態でも内容が理解可能なものに、表現は出力先にあわせて適用できるように、両者は別々であるべき、ということになる。

以上のように、今回は紙媒体とWebを比較しながら、アクセシビリティにおけるWebのメリットを中心に概論的な説明をさせていただいた。次回はもう少し具体的な例を取り上げて、アクセシブルなサイトとそうでないサイトの違いを考えてみたい。
(筆者:中村 精親)[2006/12/27]