プロから学ぶアウンコンサルティングの実践SEM講座 第1回 SEMを正しく理解する

梅澤 俊雄 [著] 2006年11月15日 13:00
http://markezine.jp/a/article/aid/322.aspx

 はじめまして。今回より「プロから学ぶアウンコンサルティングの実践SEM講座 」と、いささか仰々しいタイトルを銘打って、全12回にわたりSEMについての連載を始めていきます。第1回目の今回は、SEMについておさらいをしていきたいと思います。

SEMとは?

 ここで、オーバーチュアのキーワードアドバイスツールをたたいてみよう。キーワードアドバイスツールは、ある一部の検索エンジンで、月に何回キーワードが検索されたかを教えてくれるツールです(※厳密には検索数そのものではないが、正確な説明は次回以降に譲ります)。上から、「SEM」で18,440件、「SEO SEM」で2,802件、「SEM 原理」で678件…、人は検索エンジンにさまざまなキーワードを入力するもので、これ以降も、ずらっとさまざまな単語の組み合わせが続きます。

 これらのキーワード群から「SEM」が何かを調べるために、ヒントになりそうなキーワードをピックアップしてみましょう。すると、「ネットショップ SEM」「eコマース SEM」「インターネット SEM」「インターネット 通販SEM」「オンライン 通販 SEM」という、「インターネットの販促」に関係した内容のグループと、「SEM 顕微鏡」「SEM 分析」「SEM 電子顕微鏡」「波長 SEM」「SEM 電子顕微鏡」といった「基礎研究系」のグループが存在することがわかります。

 そこで、単独の「SEM」(18,440件)という単語を除き、キーワードアドバイスツールで出てくる全てのフレーズ群を、「インターネットの販促」「基礎研究系」「その他」という3つのグループに大まかに分類したものが、下図です。

インターネットの販促 基礎研究系 その他 合計
検索数 8,030 2,511 2,315 12,856
割合 62.5% 19.5% 18.% /

 この図を簡単に説明すると、「SEM」に関する検索を行うユーザーのうち、約6割がインターネットの販促をイメージし、約2割が「顕微鏡」などというキーワードに象徴される基礎研究系の事柄を想起していることになります。つまり、いささか乱暴な推測ですが、2006年9月に単独の「SEM」というキーワードは18,440回検索され、このうちの6割程度はインターネットの販促をイメージした検索、2割程度は(ここでいう)基礎研究系のイメージをもった検索だったと言えるのではないでしょうか?

 ずいぶん前置きが長くなりました。もちろん、この連載がテーマとする「SEM」は「インターネットの販促」に関するトピックです。そして具体的に言うと、「SEM」とは、ちょうど上で見たように検索数の割合などをヒントにしながら、検索エンジンユーザーの動向を推理/把握して、検索エンジンを販促ツールとして活用しよう、という営みを言います。「『SEM』(Search Engine Marketing)とは検索エンジンによるマーケティング手法である」というトートロジーめいた説明があまり好きではないので、あえて遠回りをして SEMを説明してみました。

SEO、P4P、クリエイティブ・コントロール

 では、ここからは少しスピードを上げていきます。「検索エンジンを販促ツールとして使うこと」を言い換えると、(A)検索の結果表示される画面(検索結果画面)の中で、自社サイトの(B)有利なポジショニング(≒順位)と(C)クリエイティブ・コントロールを行いながら、売上げにつながる見込み客を適切なページに集めることと言えます。

 (A)の検索結果画面は、検索エンジン内部の序列付けによって表示される「ランキング部分」(下図の赤色部分)と、検索キーワードごとに出稿されている広告が自動的に表示される「広告表示部分」(下図の青色部分)に二分され、「ランキング部分」において有利なポジショニングを目指す手法を「SEO」(Search Engine Optimization)、「広告部分」に自社サイトを掲載し、効果的な出稿を行う手法を「P4P」(Pay For Performance)と言います(B)。

 そしてSEOであれP4Pであれ、検索結果画面の中に自社サイトを紹介するコメントが表示されるのですが、この紹介部分に工夫を凝らすのが、(C)のクリエイティブ・コントロールです。例えば、この連載専用のホームページ(www.○○○.com)をつくり、P4PとSEO施策を行い「SEM」と検索し下図のようになれば見事、広告でもランキングでも1位になったと言えます。

販促手法として無視できないSEM

 しかし、この紹介文に問題はないでしょうか? 冒頭の「SEM」と検索するユーザーの属性について、検索数をもとに立てた仮説を思い出してみましょう。月間で18,000回近く検索が行われている「SEM」ですが、「インターネットの販促」をイメージして検索する人が6割、「基礎研究系」の事柄を思いながら検索する人が2割います。このような状況下で、図のような紹介文にしてしまったら、このサイトが一体どちらの内容を持っているのか、かいもく見当がつきません。すなわち電子顕微鏡云々のコンテンツを探して「SEM」を検索したユーザーが、「おっ。電子顕微鏡にまつわるデータ集があるのだな」と思って、ランキング部分の表示なり、広告部分の表示なりをクリックする可能性もありえると言えます。

 この問題は、こと広告部分に関しては看過できません。なぜならば、検索結果画面に表示される広告は基本的にクリック課金型の料金体系が採られているため、自社サイトにとって、全く関係の無いユーザーのクリックを呼び込んでしまうと、サイトの中身はちっとも見てもらえないのに、むざむざコストが膨らむばかりとなります。そこで、たとえば「検索エンジン」という単語を紹介文の中に入れるなどして、無関係のユーザーからのクリックを予防する対策もできます。これが、クリエイティブ・コントロールの一例と言えます。これら、(A)から(C)に至る一連の内容を、合理的な方法でブラッシュアップをかけていくことが、SEM検索エンジンマーケティング)なのです。

 もちろん、以上の他にも、広告のリンク先ページをどう選択したら良いか、あるいは時間帯別に出稿内容を変えてみるなど、SEMではさまざまな施策や戦略を立てることもできます。SEMはバナー広告などと比べると、煩瑣な作業が多いのも事実です。しかし、キーワード戦略やクリエイティブなどを洗練させていけば、購買確度の高いユーザーを効果的に集めることができるのも、SEMならではの醍醐味です。実際、SEMの効果的な運用によって、売上げを飛躍的に伸ばしたという実例も存在しています。ちなみに、キーワードアドバイスツールで調べた「SEM」の検索数を、一年前と比べてみると次のようなグラフとなります。

 販促手法としての有効性が認識され、SEMへの注目が高まり続けていることを如実にあらわすデータと言えるのではないでしょうか?

 さて本連載は、このSEMについて取り上げていくわけですが、次第に「SEM」への取組みが一般化しつつある今日、少しでも他社と差別化できるような独自の視点と手法を紹介していければと思っています。全12回、聖賢諸氏のお付き合いをいただければ幸いです。

プロフィール
梅澤 俊雄(ウメザワトシオ)
2004年東大法卒。2005年アウンコンサルティング入社。検索エンジンマーケティングSEMコンサルタントとしてクライアント支援に尽力。その後、業界別市場予測レポート等、各種レポーティングや執筆に従事。英・仏・露・羅語等を駆使し、各国のネット動向へアンテナを広げる。